2012年1月15日日曜日

世界はWin-Winなど志向していない?-世界インテリジェンス事件史 [単行本] 佐藤 優 (著)





手嶋龍一氏の「ブラック・スワン降臨」に続いて、インテリジェンスの本を続けて読みました。

著者は佐藤優。
有名人だとは思いますが、私はこれまであまり読んだことがありませんでした。
元外務省の役人です。一度逮捕・投獄されて、その後(今)はノンフィクション作家のようです。

作者の現代世界観はこうです。
現代は「新・帝国主義時代」である。
各国は自国の利益を最大限にするよう行動してくる。そのためには他国が不利益を被ることもいとわない。


自己啓発界(?)ではWin-Winの関係を目指しましょうとよく言われていますが、政治の世界は、全く別の世界だと言うことですね。

そして、このような世界の中で自国の利益を最大にする、もしくは他国にカモにされないためにインテリジェンスが必要であるとしています。

本書の中での「インテリジェンス」の定義はこうです。
「国家が生き残るための情報」もしくは、「戦争に勝つための情報」。
(「知的な奴」の意味ではないです)

基本的には事例が次々紹介されていて、一部分を読んでも結構面白いです。
例えば、次のような事例がたくさん紹介されています。

  • CIAの情報分析がお粗末だったため、アメリカはイラクの大量破壊兵器保有を本気で信じていた思われる。
  • ポーランドでユダヤ人6,000人にパスポートを発行して命を救った杉原千畝は、正義感からそれをしたのではなくて、情報と引き換えにしたのだ思われる。
  • 日露戦争に日本が勝ったのは、単純な軍事力よりも、内乱を起こさせたりしたインテリジェンスの力が大きかった。

全体の論調としては、日本はインテリジェンスが足りない(機能していない)、と書かれています。
この点は、先日感想を書いた手嶋龍一氏の著書と同じですね。
(逆に強いのは、アメリカ、イギリス、ロシア、イスラエル)

手嶋氏と本書の議路を合わせて考えると・・・
日本は安保があるからインテリジェンス機関が発達しにくかったのでしょうねえ。
しかし、戦争が無いとしてもインテリジェンスが必要な時代だと言うことはわかりました。
日本にもぜひインテリジェンス機関を作ってほしいです。


今回は、若干私の手の届かない範囲のテーマの本でしたが、使えるヒントは結構ありました。
意思決定に使える情報を吸い上げる仕組みは絶対必要だ。そうでないとカモにされる。しかし完全な情報を待っていると時機を逸する。
この点は、個人も国家も同じですね。


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