2013年3月14日木曜日

いい人は帰ってこなかった - 夜と霧(ヴィクトール・E・フランクル)



次は明るい本を読むと言いながら、この本を手に取ってしまいました。

第二次世界大戦時、ナチスの収容所を経験した心理学者が書いた本。ホロコースト全体の記録ではなく、この著者が見た収容所の記録です。

一番重要な考察はこれです。
「精神的にあきらめた人は必ず死んだ」ということ、そして、「収容所の体験を運命と捉え、その一回性と唯一性に意味を見いだすことが、収容所で生き残るための必要条件だった」ということです。
もちろん、大勢の人が意味もなく殺されたような場所なので、精神的にあきらめなかった人が全員生き残ったということではありません。


他にも、人々が収容所でどのような心的態度を示したか、精神がどのような変遷を辿っていったかが書かれています。

例えば・・・

  • 人々は「なんだかんだで、酷いことにはならないはずだ」という「妄想」に取り付かれた
  • シャワーから(毒ガスではなく)本当の水が出た時、人々は歓喜した
  • しばらくすると、内面がじわじわ死んでいき、正常な感情が無くなった
  • 楽観的な噂(例えば、戦争がもうすぐ終わる)が嘘だと分かると、人々は救いがたい絶望の縁に沈んだ
  • 運命に弄ばれた人間は、決断を下すことを尻込みするようになる
  • (解放された時)うれしいということは無かった。うれしいということがどういうことか、もう一度学び直さなければならなかった。

私とは境遇が違いすぎて、ここから容易に「これを学んだ」とは言えません。
人間が極限状態になるとどうなるのか、人間の限界はどの辺りにあるのか、その一部が分かります。

時間と心に余裕がある時、こういう即効性が無くても深い本を読んでおくべきですね。

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