2012年11月28日水曜日
"キャリアデザイン"など出来るわけがない - 「やりたい仕事」病(榎本 博明)
最近の学生が受けている「キャリアデザイン(笑)」教育の怪しさについて、心理学者が書いた本です。
要約と感想を書きます。
1.要約
全体として、「キャリア教育」で思ったほど幸せになれない構造を描いています。
(1) 学生の頃
最近の学生は「キャリア教育」なるものを受けている。ここでは、自分がやりたいことを明確にし、それに従ったキャリアデザインを作るよう指導されている。それは企業の採用面接でキャリアについて問われるからである。
(2) 就職してから
学生の頃描いたキャリア通りの仕事を与えられることはほとんどない(企業は学生にキャリアについて問うにもかかわらず)。日本はそういう社会ではないし、学生の頃のイメージというのは貧困だからである。
しかし、キャリア教育を受けた世代は、描いたキャリアと目の前の仕事の関係が見いだせないことに困惑し、目の前の仕事に集中できなくなる。
(3) 結論
そもそも、今の変化の激しい時代、キャリアデザインなど出来るものではないので、目の前の仕事の集中しなさい。
そうすることで、出来ることが増える。
出来ることが増えると、違った景色が見える。
2.感想
「キャリアについて無計画で良い」という結論には賛成しかねますが、出来ることを増やして、少しずつ違った景色を見られるようにするという発想は気に入りました。
少なくとも、「キャリアデザインを綿密に組み立てろ!」というのはムチャぶりだということがよくわかったので、この方向性で突き進みすぎないように警戒します。
私は「キャリア教育」を受けたわけではないですが、知らず知らず「キャリアデザイン」をするほうが良いという考えは持っていました。教育は受けていなくても、メディア・会社などを通じてそのような考えを持ったのでしょう。
ただ、著者が指摘するように、ここ数年変化(異動)が激しすぎて、キャリアデザインというものをとらえ直す必要があるとちょうど思っていたところであり、面白い本でした。
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ちなみにこの著者は
「<ほんとうの自分>のつくり方 (講談社現代新書) 」
なんて本も書いていて、学生のころ読みましたが、とても面白かったです。
こっちの本の結論は
「本当の自分など無い(少なくとも、多くの人にはそう思ったほうが身のためである)」
だったと記憶しています。
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