本エントリでは、戦争関連、人の死を想像させる写真などがあるので、苦手な方はご注意ください。博物館の展示物の範囲なので、グロいというほどのものはないですが。
博物館入り口付近 |
博物館入り口付近 |
博物館入り口付近 |
博物館入り口付近 |
歩いていくと、バラックが近づいてきた |
有名な強制収容所の入口 |
ソ連が強制労働させられていた場所 |
チクロンBのガス缶 |
靴の展示 |
カバンの展示 |
メガの展示 |
食器の展示 |
アウシュビッツは有刺鉄線だけでなく壁もある (どのくらい当時の感じなのかは不明だが) |
有刺鉄線は二重構造 |
公開絞首刑台 |
ガス室 |
ガス室の隣の焼却炉 |
アウシュビッツの話の続き。 前回同様、総合的な解説は書けません。見学したものの感想を次々に書いていきます。
<アウシュヴィッツ博物館>
さて、予約していた17時にアウシュビッツ博物館に入館。19時30分閉館なので、2時間半のタイムリミット。
・ 入り口付近
アウシュヴィッツ博物館入口は何か生々しい展示があるわけではなく、少し厳かな雰囲気の廊下のような場所が続く。ベルリンのユダヤ人博物館もこういう少しアーティスティック系だった気がする。
その博物館用に作られた空間を過ぎると、実際に使われていた門などが登場。
アウシュヴィッツ拡張期にソ連兵が強制労働させられて場合によっては射殺されたのがここだとか、逃亡を企てたものを見せしめに公開絞首刑にしたのがここだとか説明がある。そういうのを、集中して想像力を働かせながら行くと全く時間が足りない。
ちなみに、アウシュビッツ=ユダヤ人絶滅収容所のイメージだが、(ビルケナウではなく)アウシュビッツ側は、度々ソ連兵を収容・殺害していたという話が度々出てくる。
・ バラック
少し進むと、実際に収容などに使われていたバラックが建ち並ぶエリアに出る。
いくつかの建物に展示が分散してあって、「このバラックでは戦争犯罪の証拠がテーマです」とか、「このバラックではユダヤ人が移送されて選別されて殺されるまでの写真を展示してます」とか、バラック別にテーマ性のある展示。
(バラックの一部は普通にオフィスになっているっぽい。スタッフが出入りしている。)
・ パネル(心の焦点)
中は広いので、展示はゆったりした作りで、パネルなどはかなり大きい。畳よりでかいようなサイズの写真も多く迫力がある。
ハンガリー(※1)から強制移送させられたユダヤ人の選別される前の表情などがはっきりわかる。
本当は、この一つ一つの写真に心の焦点を当てることで礼節としたいところだが、2.5時間という時間の制約があるのでどうしても流し見気味に行かざるを得ない。スタンスとして間違っているのではというモヤモヤは少しあった。・ 人間の髪
個人的にはこれが結構キツかったかも。人間の髪で出てきたカーペットの展示(写真撮影禁止)。ベージュの綺麗な色をしている。以前写真では見たことがあって、まあ写真だし、人間の髪の毛だと言われてもさほどピンとこなかったけど、実際にポーランドの街中で金髪の人を大勢見た後これを見ると、これが元々人間の髪の毛だったと言うことをはっきりイメージしてしまう。目の前で見学している人も金髪だし。
・ 靴の展示(膨大な量に見えるが当然ごく一部のはず)
靴の展示。最初気になったのはほとんどがモノトーンの色の靴だということ。他の部屋には普通に色のついた洋服の展示があることや、ホロコーストの直前は比較的平和だったことを考慮すると、当時色がついたの靴だって多数あるとは想像する。なので展示品としてのメッセージ性も考慮して、このような色の靴を選んでいるのだろう。
この辺り、裏側をあまり推測するのはゲスいようだが、当然展示品なので、回収物を無造作に並べているわけでは無く、ある程度メッセージ性を持って並べられていると考える方が正しく理解はできそう。
ここからもう一つ言えるのは、一見膨大な靴の量に見えるけど、これはごく一部ということ。
広大に見えるビルケナウの収容人数はMax約10万人で、アウシュビッツ・ビルケナウの犠牲者数が110万人。単純計算するとあれを11回転させたくらいの犠牲者数がいると言うことだからな。
・ 眼鏡の展示
これも先ほどの靴の話と同じだが、どの眼鏡も形が似ていることに少し驚く。
細い金属の針金みたいなフレーム。言うなればのび太の眼鏡の形。中島君でもいいけど。
当時はプラスチックのめがねフレームなんか無いのか、それともやはり展示品としてのメッセージ性が考慮されてある程度選ばれているのか。
・ カバンの展示
カバンの展示。一部の鞄には名前が書いてある。これを見るとやはり一人一人普通に生活や持ち物があった人間だと言うことが分かる。
※ この辺りまで見たところで、昼からずっと外を見学しており冷えたからか、急激な尿意。博物館の入り口まで戻るのはかなり大変なので前に進んでいったところ、バラックゾーンの真ん中あたりにトイレがあって助かった。
・ アウシュビッツには壁がある
アウシュヴィッツの方は有刺鉄線だけではなくて、ちゃんと壁があった。正直、当時のものかはよくわからないが。
・ 処刑用の部屋
様々な処刑用、刑罰用の部屋がある。窒息死刑のための部屋とか見ているだけで気分が悪くなってきた。
・ ガス室
ガス室は、順路通り回ったら最後の最後にあった。
ライティングの演出も含めて、ここも気持ち悪い。
「大勢の人が苦しみながら死んだ場所なので静かに見学するように」との注意書きが書いてある。
思ったより小さいと感じたが、これはビルケナウが稼働する前の初期のガス室だったとのこと。ビルケナウの方は跡地はあるけど、破壊されてしまい部屋としては現存はしないらしい。
ガス室のすぐ隣に焼却設備があり、ロジスティクスが考慮された工場であることがわかる。
<ビルケナウ入場は諦めた>
最後飛ばし気味だったけど、それでもアウシュヴィッツ博物館でに2時間半使い切った。多分そうなるだろうと思ってたけど。
19時30分までであれば、予約したチケットでビルケナウに入ることもできたが、バスに乗っていく必要があり、その移動のためトータルで見学する時間が30分くらい減るので、ビルケナウ入場は諦めた。
ビルケナウは昼に外からみたのでそれででいいことに。
<時間足りないけど仕方ない>
全体的に1回では時間全然足りない。しかしこれは入場制限、しかも時間まで制限しているのはわかる気がする。歴史好きな人が来たら何時間でも見られてしまう興味深すぎる場所だから、時間制限しなければ歴史マニアが滞留してしまうだろう。私ももっと隅から隅までビルケナウも含めて見てみたいと思ったけど、まあ仕方ない(ちなみに、アウシュビッツ博物館にはゲストハウスもあるので、泊まり込みで2日かけて見学することも出来る模様。本当に敷地の中にあるので悪い夢とか見そうだが)。
屋外で物量も多く、維持管理が大変であろう歴史遺産を見られる状態でずっと保存してくれていることがとりあえずありがたい。
<人間は国家や組織の論理で600万人殺す>
昨年ドイツを回って、今年ポーランドを回って思ったのは、時代や政治の潮流とか、理由は色々あったにしても、何であれ「人間は国家や組織の論理で600万人殺す」ような生き物だと言うこと。一度国や組織が動きだしたらもう末端には止めようがない。比較的平和な時代から急転直下でそれが起こる。実際起きるときには予兆なんてわからないのかもしれない。未来だって、何が起きるか分かったものではない。
色んなものを積み上げて大事にしたところで、時代の流れ次第では全部吹っ飛ぶこともあるということ。可能性としては。
ソ連側の第二次大戦関連博物館とか、中国の大躍進とか(つまり被害者数の観点でもっと規模が大きいインシデント)の博物館もあれば見てみたいけど、そんなのは無いんだろうな。多分。
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※1)
アウシュヴィッツでは、ハンガリーからの強制移送の話も度々登場する。昨年ハンガリーからポーランドに入れるか調べたところ、ハンガリーとポーランドの間には山地があって直線的に入れる経路はあまり見当たらなかった。なので当然大回りして輸送したということか。あと、やはり昨年ブダペストでシナゴーグとユダヤ人街よく見ておけばよかった。