2012年10月29日月曜日

プレゼンテーター自身を売り込むシンプルプレゼン



先々週から、「iPadプレゼンセミナー」というのを受講しています。
全5回のうち2回が終わりました。

実はiPad自体にはそれほど興味が無かったのですが(一応持ってるけど)、会社がPowerpoint文化になってきたので、スライドを使ったプレゼンテーションの技を増やしたく受講しました。

本講座で推奨しているプレゼンテーションのスタイルは「シンプルプレゼン」
スライドには大量の文字を書かずに、1行とか、3行しか書かない。残りはプレゼンテーターの喋りで話を進めていく、というやり方です。
例えば、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは、スライドがものすごくシンプル。例えばiPhoneの写真を1つ映したまま、ジョブズがベラベラ喋ります。主役はあくまでジョブズ。
これに対して、日本の企業で多いのが、スライドに説明文書をガンガン書くやりかた。主役はスライド(=説明書)。

(動画はジョブズがiPhoneを紹介するプレゼンです。最初の3分10秒くらいまでが特にかっこいい。)

面白いと思ったのは、前者の「シンプルプレゼン」はプレゼンテーターが主役なので、プレゼンテーターごと売り込めるということ。
そういえば、ジョブズもプレゼンテーションで名をあげましたよね。
スライドを主役にするのではなく、あくまで主役はプレゼンテーター。
なるほど、個人を売り込むのには使える考え方かもしれないし、これならiPad関係なく応用できますね。

私の勤め先では、プレゼン資料はどちらかというと説明書なので、会社で全スライドをこのように作るのはハードルが高いですが、プレゼンテーションの途中で2~3枚混ぜることは出来そうです。きっとメリハリがついて良いだろうと思います。

今度やってみよう。
新しい技を身につけるのは良いですね。

ちなみに、受講しているうちにiPad自体の面白さにも気付いてきましたが、それは多分また今度。

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なお、このセミナーは、去年「スピーチ・プレゼンセミナー」を受講したのと同じ、日本プレゼン・スピーチ能力検定協会の講座です。

2012年10月28日日曜日

村上春樹仕事術(2) どうやって次のレベルに進んでいくか



(「神の子どもたちはみな踊る」という短編集を書いたとき)
とにかくこの連作では、三人称で、人物にみんな名前をつけて、各編違う登場人物で、地震という統一テーマで、一週間か二週間で一本書いてやろうと最初に決めてとりかかった。
(村上春樹)


村上春樹は、常に自分の表現の幅を広げることにチャレンジし続ける。その幅を広げていくやり方が面白いです。

村上春樹の主戦場は、長編小説。これは本人も言っています。
しかし、村上春樹は短編も書きます。
短編を一種のエクササイズ・実験場ととらえているのです。

例えば、村上春樹の小説は、一人称(有名な「ぼく」)で書かれていたのですが、村上はこれに表現の限界を感じていました。人物に名前をつけて三人称の小説を書きたいと思っていたのですが、長編でいきなりそれをやるのは難しい。そこで、冒頭に引用した通り、短編で人物に名前を付けて書くトレーニングをします。
こういうことをしたうえで、長編に応用していくのです。

また、シドニーオリンピックの際は、観戦記を書くという使途をとしているのですが、毎日完成稿30枚を書くことに決めて、それを守ったそうです。

自ら、期限・枚数・ルールなどを設定してクリアしていくあたり、まさにトレーニングですね。


さらに、村上は翻訳もします。
これも、表現を身につけるトレーニングになっています。
村上春樹は、書ける時期が来るまで長編小説は書きません。4~5年に一度しか長編小説を書かないのはそのためです。
しかしその間文章を書かないと腕が鈍ってしまう。そこで、小説を書かない時期は、翻訳をすることで文章を書く感が鈍らないようにしつつ、小説家の作品を吸収しているのです。

短編・長編・観戦記・翻訳など、少しずつ違うタイプの仕事をしながら次のレベルに進んでいく。
これはプロフェッショナルを目指すヒントになりますね。

そういえば、私自身もスピーチのトレーニングをしたことで、文章も変わったなあ。


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村上春樹仕事術(1)というタイトルのエントリはないのですが、先日のエントリ

コントロールしない創作 「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです(村上 春樹)」

を(1)にしたいと思います。

2012年10月26日金曜日

目的が曖昧だと引き際がわからなくなる 「失敗の本質(野中郁次郎ほか)」



結構前ですが、読みました。
日本軍が失敗した6つの戦闘を事例として分析し、教訓をとりだしています。
その6つは・・・

  • ノモハン事件
  • ミッドウェー海戦
  • ガダルカナル作戦
  • インパール作戦
  • レイテ海戦
  • 沖縄戦

です。

以前のエントリ


<読書感想> 現時点今年最高の1冊! - 戦略の本質 (野中郁次郎 他) 

で紹介した本の姉妹編です。(「失敗の本質」の方が先。つまり姉本?)


「戦略の本質」は成功事例の分析で、「失敗の本質」は失敗事例の分析。
どちらもとても面白いのですが、成功要因は「後から何とでもいえる」という思いがぬぐえません。それと比べると、失敗のパターンをとりだして戒めている本書のほうが利用価値は高そうです。

面白かったこと1点だけ抜き出します。
それは、

「目的が曖昧だと引き際が分からなくなる」

という話。

日本軍の中で、目的の共有がされておらず、どこまでやればよいのか、グダグダになっている様子が幾つか描かれています。

・ 敵艦隊を攻撃するのか、島をとるのか曖昧なまま始めたミッドウェー海戦
・ 持久戦(現地案)なのか、総攻撃をかける(大本営案)のか、曖昧なまま遂行した沖縄戦

等です。

これは、日本人の精神性なのでしょうか?
私もそういうところがあるんですよねえ・・・
つまり、私自身も、目的が曖昧になった活動を続けてしまうという傾向があります。
始めは目的が明確なのですが、やっているうちにだんだん目的が曖昧になる、ということが多いような気がします。
元々の目的が達成できない状況になっても、別の効用が出てきたりして、特に苦しくもなく続くことってあるんですよ根絵。

こういうのって、意図せず身についてしまうので、定期レビューをしないといけないのかと昔は思っていましたが、うまく定期レビューを埋め込めたためしがありません。
というか、定期レビューという活動も徐々に目的を失う可能性ありますよね。レビュー内容も陳腐化するし。
そのような「タスクを埋め込む」的な、自分を機械のように扱う考え方ではなく、自分の直感が働くようなコンディションを作るほうが、その時その時にあった活動が出来て良いのかもしれないです。


話が若干飛躍してしまいました。
以上です。

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この「失敗の本質」、思うところがありすぎて、感想をしばらく書けずにいました。
で、だいぶ忘れたころにもう一度トライしたらなんとか書けました。ある文章を書ける時期/書けない時期ってありますよね。

尚、もちろん仕事ではそんな悠長なことは言いません。調子が悪かろうが無理やり期日までに書きますよ。

2012年10月22日月曜日

ブルー・オーシャンは見つけるものではなくて作り出すもの 「ブルー・オーシャン戦略」のまとめと感想






血みどろの戦いが繰り広げられるこの既存の市場を「レッド・オーシャン」と呼ぶのなら、いま企業が目指すべきは、競争自体を無意味なものにする未開拓の市場、「ブルー・オーシャン」の創造だろう。(「ブルー・オーシャン戦略」)


ずっと読んでみたいと思っていた、「ブルー・オーシャン戦略」を読みました。
まず根本的な勘違いをしていたことに気付きました。
「ブルー・オーシャンは見つけるものではなくて作り出すもの」である、ということ。
(もしかして、この勘違いをしていたのは私だけ?)

結構細かい手法が書いてありますが、結論は、
これまで業界には無かった競争要因を付け加えて、新しいバリュー(顧客にとっての価値)を創造することで、ブルー・オーシャンを創造できる。
また、従来の競争要因の一部を無視することでコストを削減する。
です。
バリューとコストをコントロールするドライバーとして、競争要因に注目するということですね。
逆に、「とにかく精度を上げろ」といった品質向上で価値を作り出したり、「とにかく切り詰めろ」みたいなコスト削減は、バリューとコストのバランスがいつまでたっても取れない(レッド・オーシャンから抜け出せない)ので駄目だということです。

例えば、シルク・ドゥ・ソレイユというサーカスは、従来あった競争要因「動物ショー」「花形パフォーマー」等を無くすことでコストを削減し、変わりに新たな競争要因である「快適なテント」や「芸術性の高い音楽やダンス」を付け加えることで、新しいバリューを作り出し、ブルー・オーシャンを創造した、とのこと。

他にも例がたくさん載っており、読んでいて面白いです。
ブルー・オーシャン戦略の概要説明はたくさん出回っていますが、直接読むに値する本だと思いました。

なお後半は、新しい事業を既存の組織に根付かせるための手法(一種のチェンジ・マネジメント)まで解説しており、ブルー・オーシャン創造から実際の導入までの手順書のように使える本になっていますが、逆に後半はオリジナルな内容はあまりないと思います。
既にそういうことに詳しい方は、前半の、ブルー・オーシャンを作り出す部分だけご覧になったら良いかと思います。

2012年10月21日日曜日

スキマ時間と集中力


集中するときには、徐々に潜っていく。海底へと頭を向けてゆっくりと潜っていくような感じだ。一気に深海に落ちていくのではない。人掻きごとに深いところへ進んでいく感覚だ。
(羽生善治)


最近、というかここ数年、

・ スキマ時間に勉強しましょう
・ 15分あったらカフェで勉強しましょう
・ 1駅の間にも単語を1つ覚えましょう

といった話を聞き実践しているうちに、スキマ時間にしか勉強しない奴になっていました
スキマ時間に勉強していることが、いつの間にか長時間集中的に勉強しない言い訳となっていたようです。

最近、集中が続きにくいと思っていたのですが、もしかしたらこれが原因かもしれないです。

先日、日曜日が丸ごと空いたので、久しぶりに自分の部屋で強引に4時間くらい続けて勉強してみました。
それで思った(受験勉強のころを思い出した)のですが、長時間強引に勉強するというのは、スキマ時間を積み重ねるのとは別の経験ですね。
冒頭に引用した羽生善治が言うように、時間をかけないとたどりつけないゾーンがあるような気がします。

ひとまず、集中力を失ったわけではないということが分かってホッとしました。

※ 余談ですが、最近、何か不調があると「年齢のせいなのか?」と考えがちだったのですが、安易に年齢による衰えを疑うのはダメですね。まずは、原因は他にあると考えて手を打つほうが建設的です。


先に書いたように、スキマ時間に勉強していることが、長時間勉強しないことの言い訳になっていました。
言い訳が多いとロクな人生が送れないとは思っていますが、意図せず・知らないうちに身についている言い訳がありますね。
まあ、こういうのは気をつけても身につくものだと思うので、気づくたびにしっかり修正すればよいのかなと思います。

なお、スキマ時間に勉強することを否定はしません。
「スキマ時間も勉強するが、長時間集中する機会も作る」という方針にします。

2012年10月20日土曜日

効くことだけやれ 「このムダな努力をやめなさい(成毛 眞)」


私はつねに、「頑張らない」「我慢しない」「根性を持たない」という三原則をモットーにしてきた
(成毛眞)

日本マイクロソフト元社長の成毛眞の本。

タイトルの意味するところは、「無駄な努力を止めて、本当に効くことだけをやりなさい」ということです。
努力をしなくて良いとは言っていません。

著者は・・・

・ 朝令暮改は超OK
・ 「何をしでかすかわからない人間」になりなさい(そのほうがカリスマ性が上がるから!?)
・ 本能を大事にしなさい
・ まわりの空気なんて読まなくていい

と主張しており、結構トリッキーな人だという印象です。
この本もトリッキーで、面白い話はたくさんありましたが、全体として何なのかはよくわかりませんでした。
一貫性などに囚われないほうが人生を楽しめる、というのが1つのメッセージだったのかもしれないです。

こんな人がマイクロソフトの社長をしていたんですね。
上司に持ったら大変そう。もちろん能力はものすごいのでしょうが。


せっかくなので、面白かったことを、メモしておきます。

・ 「根性」でやることの大半は無意味だ
・ 「いい人」は消耗しつくされる
・ 日本から逃げろ
・ 一流の人間とそうでない人間の違いは、何を努力すればいいのかがわかっているか否か
・ 人生で固執しなければならないことなど、ほとんどない
・ 発明家イライシャ・グレイは、ベルより電話の特許申請が2時間遅かったため、歴史に名を残せなかった
・ つまらない人と話すのはたとえ1,2分でも無駄。一人で思索にふけるほうが有意義
・ 現代人は時間を節約するが、節約した時間でテレビを見ている
・ 誠意を尽くした外交などしていてもなめられる


読んでいて、痛快なようであり、おっさんの戯言のようでもありました。

2012年10月19日金曜日

コントロールしない創作 「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです(村上 春樹)」



(村上春樹自身が書く小説のストーリー展開について)どうなるか僕にも先はわかりません。この角を曲がったらその先に何が待ち受けているのか、書いていても見当がつきません。
<中略>
最初はいくつかのプロットと、登場人物程度しかありません。いかなる設定も持たずに書き始め、ただただ日々書くことによってストーリーを発展させていく。(村上春樹)

村上春樹が、メディアのインタビューに回答したものをまとめた本です。1997年~2009年の、18本のインタビューが収録されています。

この本は面白いです。
しかし、役立つかはわかりません。

村上春樹の創作の仕方がよくわかります。
私は、クリエイティブな仕事をしている人の創作の本・ドキュメンタリーが好きですが、その中でも面白かったです。

これまで特に好きだった
・ 「出発点」(宮崎駿のエッセイ・インタビュー集)
・ 「もののけ姫はこうして生まれた」(もののけ姫制作のドキュメンタリー)
・ 「プロフェッショナル 漫画家 井上雄彦の仕事」(井上雄彦のドキュメンタリー)
の3つに並ぶ面白さでした。

500ページもある本で、しかもインタビュー集なので、いろんな話が出てきますが、今回は、村上春樹の物語の作り方について書きます。


村上春樹は、自分が自分の物語の最初の読者であると言います。
冒頭の引用文に書いてある通りですが、物語のアウトラインを決めて書き始めるわけではなく、自分の中から出てくるものを文章化することで物語を進めていくそうです。
これでよくあの長い小説が書けるなと感心しますが、まあ、村上春樹の作品を読むと納得という気もします。村上春樹の作品は、話の展開が面白いのではなく、文章が面白いというタイプのものなので。

また、
神様が上から見て、こいつがこっち言って、あいつはそっちに行かせてというふうに、作中人物の行動を動かしていくって、上からの目線という感じがすごくしたわけ(村上春樹)

とも言っています。
ストーリーや人物をコントロールするのが好きではないのですね。

実は、ストーリーや人物をコントロールしすぎないというのは、先に出した宮崎駿や井上雄彦とも共通しています。村上春樹はアニメーションに興味がないので宮崎駿のことを意識してはいないようですが。


さて、このコントロールしないというやり方・・・
意味はわかりますが、どうしたらそれが出来るのかは正直見当がつきません。
実はこのコントロールしないで何かを作り上げるというやりかたを知った時に、自分の発想とあまりに違うので感銘を受けてマネしようとしたことがあります。しかしうまくいきませんでした。
むしろ私はコントロール好きの人間(だからプロジェクトマネジメントに向いている)なので、真似してもあまりうまくいかないのでしょうね。

何か仕事に活かせないかな・・・とも考えましたが、思いつきません。ビジネスというフィールドに向く考え方でもないような気がします。
しかし、普段仕事でコントロール重視の生活を送っているということがわかりました。コントロールしすぎない時間も確保したいですね。

なお、本書は、同じ質問に何度も回答しているので、同じ話が何度も出てきます。
それは適当に読み飛ばしましょう。

2012年10月18日木曜日

みんな不安に思っている? ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉 (リンダ・グラットン)




未来の働き方について書いてある本です。
著者はビジネススクールの教授。

このような、堅めで分厚い本が平積みになって本屋に置いてあるということは、きっとみんな未来の働き方について考えたいのでしょう。
私もそうです。最近、私の勤め先が会社再編していることもあって特に。


本書の結論としては、今後働き方について、次の3つのシフトを覚悟しろ、としています。

1.ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
検索技術により浅い情報にアクセスしやすくなった時代では、ゼネラリストの価値はますます下がる。従って、特別な付加価値をつけられる人間「スペシャリスト」になる必要がある。
しかしこの生き方には、自分の専門性を磨くために、大量の労力と時間を投資する決意が必要だ。

2.孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
仕事のアイデアを活性化するため、そして自己を再生するためにもコミュニティを作ることが重要だ。
これには、SNSなどインターネットが役に立つ。

3.大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
金と消費が好きであるということがどういうことなのか、考え直す価値がある。金を稼ぐことだけではなく、自分自身・家族、社会全体のことを考えて仕事をきめて良いし、そのほうが幸せかもしれない。



読んでいるときは面白かったのでまとめてみたのですが、結論自体はわりと普通でした。

これをもとに自分自身のシミュレーションをしたり、アクションをとりださないと、あまり意味がなさそうです。
その点、この本は事例やシミュレーションが出てくるのが良いです。他人のシミュレーションは、自分自身がシミュレーションをするときに役立ちます。
どんなことが起こりうるか、考えられるパターンを仕入れたい人はどうぞ。


しかし、このような、未来について書いてある本いずれにも言えることですが、どこからどこまで本当かわかったものではありません。
ありそうな考えと、ありそうにない考えは、自分の中で整理して持っておかないと、今後も入ってくるであろう様々な情報に振り回されそうです。

2012年10月13日土曜日

ポピュリズムは民主主義につきもの? 「池上彰の政治の学校」


票集めに躍起になっている政治家と、青い鳥を追い求める国民。民主主義政治につきものの現象「ポピュリズム」
(池上 彰)

相変わらず、池上彰の本は(私のような)初心者に優しいですねえ。

この本、池上彰が、政治を理解するためのポイント、例えば、「政党とは何か?」「国会とは何か?」「官僚とは?」「ポピュリズムとは?」、といったことを、を簡潔に解説しています。

網羅的には説明しないが、ニュースを理解するためのツボを突く。毎度のことですが、この方は、このようにツボを突くのがうまいなあ、と思います。


この中から、今回は「官僚」の話、「ポピュリズム」の話を、します。



<官僚>

個人的に面白かったのは、「官僚」の話です。
官僚とは、○○省などに勤めていて、国家の政策・予算などの意思決定に大きくかかわる公務員のことです。

メモとしては・・・
・ 天下りは、官僚の新陳代謝を促し、常に官僚に優秀な人間を置いておくために一定の効果がある
・ 官僚は、政治家に政策の叩き台を提供することで、陰で政治を動かしている
・ 日本の官僚は、世界的に見たらとても優秀。例えばアメリカの場合は、政治家サポートのために民間から優秀な人を招へいする
・ 官僚はスケープゴートにされることが多いが、基本的には国のことを考えて動いている

なるほどねえ。
少し官僚のイメージが変わりました。
この視点から、官僚が出てくるドラマ(「官僚たちの夏」とか、「不毛地帯」とか)をまた見たくなりました。




<ポピュリズム>

本書全体としては、政治、特に日本の政治が極端なポピュリズムを見せているという問題を指摘しています。

「ポピュリズム」とは、この本を参考にまとめるとこのような感じです。
衆愚政治と訳される。
民衆の支持・人気を得られる政策を実行するという政治思想・政治姿勢のこと。
大衆の意見を代弁する政策をするのだから、一見良いようだが、大衆は必ずしも政策を理解していないし、長期的な視点を持っていない。
この結果、短期的視点に立った政策や、一見ハデで良さそうだが効果のない政策などが取られがちになる。

確かに、最近の総理大臣を見ていると、この危うさを思い切り感じます。

本書では、主に日本の政治を例としてポピュリズムを解説していますが、ポピュリズムは民主主義につきものであり、海外の政治も同様の傾向を見せているそうです。

なるほど、日本の政治家は最悪なのかと思っていましたが、ポピュリズムについては、特別日本だけが悪いのではなく、世界中の民主主義国が対処しなくてはいけない課題ということかもしれないですね。

ということで、政治に疎い私としては勉強になりました。

2012年10月12日金曜日

手で触れて、体験したことしかわからない

油圧ショベル

僕は<中略>生身の身体を通してしか、手に触れることのできる材料を通してしか、物事を明確に認識することのできない人間である。
(村上春樹)

上司の計らいで、建設機械に乗る機会を頂きました。
これは私にとってはかなり良い体験でした。
乗ったのは2種類。「油圧ショベル(上記写真)」と、「ホイールローダー(下記イラスト)」です。

私は、建設機械メーカーでERP導入プロジェクトをしているので、仕事で建設機械の生産についてあれこれ話します。

もちろん、乗ったことが無くても、勉強しながら何とか仕事を進めることは出来ます(これまでそうしていたわけだし)。
しかし、具体的な体験をいっぱい持っているほうが、間違いなくうまく進められます。
(この点、「実際にコーディングしないとわかるようにならない」という、IT(前職場)の世界で言われていること同じでした。というより、職場に限らず同じなのだろうと思います)
今回実際に乗ったことで、うんと建設機械が身近なものになりました。


勉強したので、主な部品の機能と名前は覚えていました。
しかし、実際に各パーツを動かして(油圧ショベルの場合、掘削のために動かせる関節が3か所ある)、土を掘ったり、堅い部分を掘ろうとして機械が異音を出したり、アームを下ろしすぎて機体前方が浮いたり、動かし方が雑で土砂がこぼれたりする・・・というのは、お勉強とは全く別の体験です。

文字を読む勉強だけで、情報が頭にガンガン入って、イメージがわきまくる人はそれで良いのかもしれませんが、私は冒頭に引用した村上春樹と同様、具体的な経験と結びついていない知識はあまり頭に入らないほうです。
その意味で、体験というのは、頭に知識を入れるためのフックになるので、すごく重要です。

勉強というのは、「やり始めたらハマる」というところがあって、なんか惰性で続いてしまうことがあります。
私は良くも悪くもハマります。
しかし、折に触れ知識と体験を結び付けて、お勉強野郎にならないようにすることが必要ですね。


ホイールローダー


2012年10月8日月曜日

圧倒的ナンバーワンを志向する(「現実を視よ」の感想2)


100億円売らないと決めねば、100億円売れない
(柳井正)


「現実を視よ(柳井正)」の感想を先日書きました(そのエントリへのリンクはこちら)が、気になったことがもう1つあったので記事にします。

ファーストリテイリング(ユニクロ)の社長、柳井正氏。
この人の考えに「圧倒的ナンバーワンを目指さないと滅びる」というものがあります。
現代は、ウィナー・テイクス・オール(勝者が全てを持っていく)の時代。業界2位を目指すのは滅びるのと同じだ、と言っています。

そして今、柳井正氏は、
・ ユニクロの年間売上5兆円
・ 中国で今後十年の間に1,000店舗出店する
などの目標を掲げています。
(去年の売り上げが6,000億程度なので結構強気ですね)

この考えのもと、
・ ニューヨークの五番街に出展する
・ 新卒の半分以上に当たる約1,000人の外国人を採用する
などをものすごい速さで決断して進めているわけです。

圧倒的ナンバーワンを目指すのと、そこそこを目指すのでは、当然目標が変わってきます。
目標が変わればアクションが変わります。

どのあたりを目指すかで、アクションは変わってくるということです。
(すごく当たり前だった)


年間五兆円と思わなければ、中国1,000店舗展開という考えも出てこなかったでしょうし、採用人数などの具体的な打ち手も当然変わっていたはずです。

弱気な目標を立てれば、あまり高みに登っていけないアクションばかり打つことになる。
時代錯誤な目標を立てれば、いくらそれを達成しても滅びることになる。

最近自分自身もグローバリゼーションの厳しさを肌で感じているので、滅びないよう、センスある目標を立て直そうかな。





爽やかなことこの上なし 天地明察(冲方 丁)



冲方 丁(うぶかたとう)の小説は初めて読みました。
ものすごく爽やかな小説でした。


徳川四代将軍家綱の元、新しい暦を作り上げた、渋川晴海(しぶかわはるみ 1639-1715)という実在の人物が主人公の、史実をベースにした小説。
私はこの人物は知りませんでしたが、高校で日本史を専攻していたら出てきていたのでしょうか?


渋川春海は、当初、城で囲碁を打つ仕事をしていました。
しかし、それは「春海にとって己の生命」ではなく、生きがいを感じるのは算術だけでした。

その後、渋川春海は、将軍家の任命を受け、新しい暦を作るプロジェクトを推進します。
このプロジェクトの中で、測量・算術的な研究などを通じて、様々な分野の才人に会い、自分もその中で能力を高めていきます。
この才人たちの爽やかなこと。清々しいこと。
途中、何度も挫折、悲しみなどを経験するのですが、そのたびに、爽やかな才人から刺激を受け、「息吹を感じ」、最後は復活して必ずこのプロジェクトに戻ってきます。

才能ある人間の中でもまれることが、才能を開花させる一つの近道なんでしょうね。


ということで、冒頭に書いたとおり、爽やかな小説です。
しかし、最近自分自身が爽やかでなく、この小説にはモードが合い切りませんでした。
この小説にばっちりフィットするような爽やかを取り戻したいと思います。

(最近、読書をして自分が今一つ乗り切れていないことに気付くことが多いです)


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さて、Facebookのフレンド様にお勧め頂き、立て続けに冲方 丁の小説「光圀伝」を買い、を少し読み始めました。これは重いです。物理的に。

IT頭からのマインドチェンジ



休職派遣でITを離れて1年経ちます。

一つ、大きなマインドチェンジが必要でした。
ITは一般論から攻めるも悪くなかった。しかし、時にはそれだけではいけない。
ということです。
多分、多くの人には当たり前のことなのですが・・・


IT業界は、業務に必要な知識の6割位を一般論でカバーできます(6割という数字は個人的な印象です)。
なので、ITはそのへんの市販書を読むとか、それらを参考にコードを組むということが、仕事に直結しやすいです。

私は、なんとなくこのイメージで新しい仕事と勉強にも取り組んでいたのですが、どうも調子が出ません。私がこの1年やってきたERP導入プロジェクトというジャンルは、市販書を読んでも、どうも即効性がありませんでした。

それよりも、自社のビジネス、業務、組織を深く理解していくほうが、成果に直結しやすいということがだんだんわかってきました。

つまり、一般知識よりも、自分が勤める会社のビジネスを軸にするほうが良い。
力の置き方としては、7割くらい自分の会社自体から学び、一般論の勉強は3割くらいにしたほうが良いのかもしれない。

これに気付いた(仮説ですが)以上、アクションを変えるのには時間はかかりませんでしたが、このマインドチェンジが必要(かもしれない)と気付くのに結構時間がかかりました。
こんなことで足踏みしていたかと思うともどかしいですが、まあ、グループ会社内の出向とはいえ、ITを離れた以上、半分転職したようなものです。
きっと、捨て去るほうが良い思い込みをまだたくさん持っていることでしょうが、一度に全部見つけることは出来ないので、地道に一つずつマインドチェンジしていきます。



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今回の話題と関係ないのですが、マイクロソフトのクリップアートを個人のWebサイトに使ってよいというのを知ってから、フォトストックをほとんど使わなくなりました。
素材がすごく豊富で便利。
ロゴに使ってはいけないなど、規約があるので注意が必要ですが、ブロガーさんにお勧め。
今回の写真もマイクロソフトです。

ソースはこちら。
クリップ アートの使用条件に関してよくある質問 (FAQ)

2012年10月7日日曜日

日本の生活レベルは、世界的に見たら中の下? 「現実を視よ (柳井 正)」



二十年前に金持ちだった日本は、今ではせいぜい「中の下」にすぎない(柳井正)

ファーストリテイリング(ユニクロ)の社長、柳井正の本。

全体としては・・・
日本が置かれている状況は、みんなが思っている以上に厳しい。
もっとみんな海外に出て金を稼がないと大変なことになる。
ということを主張しています。

日本が今後どうなっていくか、色々なシナリオが考えられるのでしょうが、柳井正は、その中でも結構シビアめなシナリオを想定している印象を受けました。


面白いことは色々書いてありましたが、印象的だったことを一つだけ取り出します。それは・・・

ほとんどの日本人は、自分のことをまあまあ金持ちだと思っている。しかし実際日本人の生活レベルは、世界的に見たら中の下

であるという、柳井氏の主張。

なるほど。
確かに、そうなのかも。
ここ数年で、10カ国程度ながら海外を旅行 and 出張した時に覚えた違和感が何だったのか分かった気がしました。

1980年生まれの私は、時代の空気のせいか、もしくははっきりそういう教育を受けてきたせいか、「日本人は金持ちである」と思っていました。
しかし、アジア、特に中国に行って覚えた違和感は、金持ちそうな若者がいっぱいいるし、金持ちが住みそう高層住宅をたくさんあるってことです。


ただ、やはり日本の生活レベルが中の下というのは言い過ぎではないでしょうか。
例えば、また中国の都市部でも、大通りから一本外れると、まだまだ豊かではなさそうな人々・家が、たくさん見られます。

ということで、全人口の平均で日本が「中の下」かは私は疑っていますが、世界で活躍するビジネスマンのなかで「中の下」なのは納得しました。
そして、「日本人が金持ちだ」という思い込みは捨て去りました。


全体的に、柳井氏は少し現実を厳しめに見ている印象です。(私がまだまだ甘く見ているのかもしれないですが)

しかし、これを読んで、学者でもない限り現実を中立に見る必要はないし、そもそも出来ないのかなと思いました。
中立な視点・まっとうな考えを重視して、自分を丸くすることに力を使いすぎるよりは、その時点で持っている現実認識をもとに、圧倒的な行動力で突き進む。それがリーダーというものかなと思いました。
まあ、成功してこそその極端さは正当化されるのでしょうが。



<その他メモ>

・ 世界一のブランドを目指すのに、ニューヨークの五番街に出店するのは必須だった
・ サラリーマンが身分だと思っているのは、世界中で日本人だけ
・ (円高を考慮すると)日本人は身の丈の倍の生活をしている
・ 儲けない限り、日本は再建で出来ない
・ 経営のやり方は無限にある

2012年10月6日土曜日

最近ゾーンに入っているか? 「ASIAN TOUR IN TAIPEI(チャゲアス)」



チャゲアスの話をします。

チャゲアスのDVDを久しぶりに買いました。
1995年に台湾で行われたライブです。
良い買い物でした。

チャゲアスを語り出すと長くなるので、楽しめるポイントを3点だけ書きます。


■楽しめるポイント1 演出
この頃のチャゲアスのライブはバブリーな雰囲気で、今となっては違和感を覚える演出も多いのですが、これは海外で行われたということもあってか、CHAGE/ASKAとも正装に近くて、今見ても違和感ありません。

■楽しめるポイント2 ASKA絶好調

ASKAの声の調子は、1991~1995年あたりが最も調子が良いと思います。
したがって、これはASKA絶好調時のライブの一つです。
ちなみにCHAGEは大体いつでも調子良いです。
やはり、チャゲアスのライブは、ASKAの声が伸びまくっているもののほうが楽しめます。

■楽しめるポイント3 ゾーンに入っている
チャゲアスのライブは大体そうなのですが、CHAGE/ASKA本人たちが完全に入り込んでいるのが良いです。
スポーツで言う「ゾーンに入る」と似ているのではないかと思いますが、本人たちが意識の変性状態に入っています。
特に後半、
モナリザの背中よりも
僕はこの目で嘘をつく
YAH YAH YAH
が立て続けに演奏されるあたりはかなりきていると思います。


以上、DVDの楽しめるポイント3点でした。

CHAGE & ASKAのライブに行きたいとも思うのですが、最近年も年ですし、自分が(ある意味)CHAGE & ASKA側でなくてはいけないとも思いました。